五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)

□11-洗脳教育と五条悟
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 呪物の回収について一通り揉めた後、アミはその場を立ち去った。

 しかし、“六眼”をもってしても術式不明の人物と、“呪いの王”の特級呪物を放置する事が出来ず五条は追いかけた。

 撒かれてしまった時の想定を行うが、予想に反し少女はノロノロと歩くだけだった。
 しばらくついて行くと、突然、少女は五条に振り返る。

「ねえ、それカラコン?」
「バケモノ退治した事ある?」
「ふーん、君もヒーローなんだ」

 いくつかの質問を投げかけた後、“ヒーロー”と認定された五条は「なんだそれ」と言って首を傾げた。
 そんな五条を見て失笑した後、少女――アミはまた満面の笑みを浮かべた。

「ねえ、アミお腹空いた。ハンバーガー食べに行かない?」



 アミの誘いを受けて五条はハンバーガー屋へと移動した。

 昼食がまだだった五条はアミの言葉に甘えて満足のいく量を注文した。
 任務を行うには体力が必要であるため、幼い五条も必然エネルギーの摂取は重要だった。

 一方アミはナゲットと水のみしか頼んでおらず、そのナゲットすらもチマチマと齧りながら食している有様だった。

 腹が減ったと言う割には小食すぎて、五条は不思議に思いつつも年頃の少女であればダイエット思考などでそういう事もあるかもしれないと結論付ける。

 自身の食事を終えてからアミの尋問を行った。
 しかしのらりくらりとはぐらかされてばかりで、次第に五条に苛立ちが募っていく。
 
「あっ、ごじょーさとるデザートとか買ってきたら?? シェイクとかパイとかあったよ!」
「ついでにジュースもお代わりしてきなよ! はいっ!」

 五条の苛立ちが最大に達した事を悟ったのだろう。
絶妙とも言えるタイミングでアミは、にこやかに財布を差し出してきた。

「……逃げるつもりじゃねーよな?」
「逃げるってなんで? アミ何も悪い事してないよ? でしょ?」

 無邪気な笑みを浮かべる少女に毒気を抜かれる五条。

 確かにアミは何もしていない。
 特級呪物を持っていて、“六眼”を持ってしても術式が解明できないというだけである。
 それが五条にとっては大問題なのだが、確かにアミが何かしでかした訳ではない。

――少し頭冷やすか…

 苛立ちのままに尋問をしたところで、期待する回答は得られないだろう。
 逡巡した後、五条は少女に逃走をしないように釘を刺してからレジへと向かった。



 五条は席に戻り尋問を再開しようとしたが、またもや絶妙なタイミングで話題をすり替えられた。

 雑談をしつつも五条はある程度得た情報を整理する。

 アミは十分な呪術的教育を受けていない。
 呪いは認識していても、それを“バケモノ”と呼んでいるのがいい例だ。
また“五条悟”を人間だと把握していなかったのも、呪術界隈に明るくない証拠である。

 わざとかと疑ってもみたが、自分の正体に関する事以外は、嘘をついている様子はなかった。

 この事からアミは呪術協会に未登録の呪術団体に所属しており、更に、その団体に利用されている可能性が高かった。

 以前、夜我正道が言っていた。
 幼い頃から洗脳教育をされ、呪術というモノを知らずに育つ術師がいる。
 そういう術師は高確率で何か後ろ暗い事に利用をされている。
 そして、更生の見込みがあれば呪術高専で必要に応じて再教育を施す事もあると。
 
 アミは夜我の教えてくれた典型的な特徴に当てはまっている。
 従って五条は特級呪物の回収と共に、アミを呪術高専に保護させようと結論を出した。

 ただし本日はどの呪術師も対応に追われており、呪術高専も例外ではない。

 すぐに保護をと申し出ても即座に対応は出来ないだろう。

 そのため自分の任務が完遂するか、他の呪術師の手があくまでは、五条自身がアミの監視を行う必要があった。

「じゃあ、ご飯も食べ終わったしアミ行くね! 元気に生きなよ!」

 五条の心積もりを知ってか知らずか再び立ち去ろうとするアミ。

「ザケンナ、誰が逃がすか」

 机の脚を蹴って乱暴に引き留める五条。

 威嚇しながら自分と共にいるように言えば、うんざりとした表情を浮かべるアミ。

 だが、しばらくするとパッと明るい表情となる。

「あっ、じゃあ、ごじょーさとる、アミに付き合ってよ!! バケモノ退治終わって暇なんでしょ? ごじょーさとるといれば、アミも遊べるし! “いっせきにちょう”ってやつ!!」

 アミ、天才じゃん!と満面の笑みに対し、五条は少しばかり億劫に感じた。


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